続眠らない風景・松本コウシ写真集
松本コウシが映し出す都市の風景は、闇に慣れた網膜がサーチする心象風景である。人々が営みを終え、その痕跡だけが漂う時間帯に浮上する(同じ場所の昼間には見ることができない)都市の姿を捉える。そこには単神秘的、退廃的、デッドテックな美意識といった月並みな形容詞を超えた確かな実存がある。そんな夜の都市の姿を捉えた「眠らない風景1989-2003」そして本作「続・眠らない風景」を通じて彼は何を見ようとしたのか? そして、彼はなぜそれを撮ろうとしたのか?
再び夜の街に彼は出向くことになる。だが、自分が生み出した「眠らない風景1989-2003」の影は思いのほか強く、どうすればそこから離れることができるのかとても悩んだという。自分の意識そのものから離れられないから「それ」が撮れないのだという。そうして、黙々と夜の街にでかけるうちに、彼はようやく発見する。「それ」は被写体にではなく闇の都会の大気の中に存在したという。今までの作品とは違う、アトモスファー<雰囲気>的なもの。写真の中に結論を問いつめるのではなく、闇に目が慣れてくるように、香り立つように浮上してくるアトモスファー。「それ」が「続・眠らない世界」のコアとなった。 櫻井一哉 求龍堂
夜は僕をおきざりにしたまま その秒刻を闇へと吸いこんでいく 風たちの声も遠い闇に消える 冷気とともに過ぎ去る秒刻 僕は夜という時空の谷間に落ちていった
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